mirage of story
大切な人達の仇を討つため、彼女は旅へと出た。
日常から自らの意思で飛び出して世界に身を投げた。
今の世界を渡るには、どうしても自らを守る術が要る。
戦い、必要とあらば相手を斬り伏せる覚悟と勇気が要る。
平和をずっと望んできた彼女がそれでもそんな世界に身を投げたのは、彼女の覚悟が世界へ飛び出すことを躊躇う気持ちに勝ったからである。
――――。
彼女は世界へ飛び出してから、出来る限り強い自分で居ようとした。
だから心の奥底に在るそんな葛藤や恐れを、あまり口には出さないようにしていた。
「......そうだったかい」
だけれど今こうして口に出して、言葉少なげに問い詰めたり責めたりせずに聞いてくれるジェイド。
――――。
何だか、フッと気持ちが楽になった。
「ジェイドさん―――話を聞いてくれてありがとうございます」
まだ会ってから時が浅い彼に話をすることへの躊躇いや後悔は、彼女の中にもう一切無かった。
ありがとう。
そう自然と感謝の言葉が零れていた。
「いいや、礼を言うのはこっちさ?
ありがとな、嬢ちゃん。色々聞かせてもらった。
......おっと、もう随分話したな。もう陽がこんなに傾いてやがる。
ハハッ!可愛い女の子と話している時間っていうのは、こんなに早く過ぎるもんかねぇ!」
ジェイドはスッと立ち上がり陽が差し込む窓を覗き込む。
そしてわざとらしく驚いた仕草を見せると、笑いながらそう言った。
......。
本当だ。
気が付けばさっきまで空の高くに在った太陽が、もう随分と低くて差し込む光はもう完全に綺麗な夕焼けの色だった。
シャランッ。
その光を見つめ、シエラは指輪を握り直した。
「────じゃあ私、カイムの様子見てきます」
人間と魔族。
世間から見れば異様な彼等の会話は終わる。
それぞれ立ち上がった二人は互いに違う方向を向く。
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