mirage of story




 
 
 
 
『どういうことも何も無い、そのままの意味さ?
........俺はこの部隊から、姿を消す』





きっと兄貴も、俺がもうその意味を理解していることくらい判っていたんだろう。

でも、それでも兄貴はもう一度判りやすい言葉で俺に突き付けるように言った。










『分かるだろう?
部隊の一員であるお前には、部隊から姿を消すっていうその意味が。

.....もう一度言う。
俺は冗談で言ってるつもりは、無い』





部隊から姿を消す。
意味は嫌でも判った。

部隊を抜ける、即ち魔族の忠誠を捨てること。
国を裏切り捨て、逃げること。










..........兄貴こそ、自分の言ってることのその意味が判っているのだろうか。

ちゃんとその意味を、その道を選んだ者の末路を知って言っているのだろうか。
本当の本当に、冗談では無いのだろうか。


俺の頭の中で混乱と動揺がグルグル巡った。




どうして?
どうして、何でそんなこと?

幾ら考えても判らずに、兄貴に問いた。








『......意味はねぇよ。
只な、今の世界にちょっと疲れちまっただけさ。
他に深い意味は無い』




疲れた、だけ?
それが部隊を抜ける、国を裏切り逃げるその理由?



一体、兄貴は何を考えているんだろう。

俺でさえ知っている、部隊を国を裏切った者に下される制裁をその末路を......兄貴が知らないはずは無いのに。







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