mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「........兄貴────」



蘇った兄貴の去った日の記憶に零れた自分の呟きでキトラはハッと我に返った。



ッ。
彼は顔を上げる。

すると意識の端に流れ込むのは遠くの雑踏の音。
自分はそんな騒めく人の声から少しだけ離れた、人通りの無い暗くて細い道に居た。



そうか。
彼は思い出す。
今、自分が居るのはアトラスの街の路地だ。







(────そうだ。
俺は、隊長とはぐれて......)




キトラは自分の今の状況を思い出して、時間を確認すべく空を見上げる。

見上げた空は太陽がもうだいぶ低くなり、夕陽が姿を覗かせる。
もう幾らかすれば、その装いは完全に夜のものとなるだろう。








(....え、もうこんな時間経ってたの?)




さっきまで太陽は自分の真上に輝いていたというのに。

────。
どうやら彼は知らぬ間に、疲れて座り込んだまま眠ってしまっていたようだ。









(まずいな....早く隊長見つけて合流しないと)



思っていた以上に過ぎていた時間。
彼は焦りを覚えつつ、自らがすべきことをするために立ち上がる。




ッ。
だが長い時間座っていたせいか足が思うように動かない。

そのままよろけて隣にあった壁に凭れ掛かる。








「────ったぁ」




 


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