mirage of story



 
 
 
 
 
「本当に兄貴....なんだよね?」



両者の間に流れる沈黙。
その沈黙の中、キトラの静かだがはっきりとした言葉が響き渡る。







「あぁ」



その問いにジェイドは短く答える。











「兄貴っ!」



ジェイドの短い返事。
その返事の意味に彼は高ぶる気持ちを抑えきれなくなって無意識のうちに足を前に踏み出す。








「近付くなっ!」


「!?」




ユラリ。

――――!
自分へと歩み寄る彼にジェイドは何処からか出した槍を大きく振るい威嚇する。









「兄貴っ!?
俺です、キトラです!

.......俺を忘れちゃったんですか、兄貴」




ようやく再会出来た一番に求めていた人。

その人が今自分に刃を向けている目の前の状況に、驚く以外出来ない彼。













「.......お前こそ忘れてるんじゃないかい、キトラ?」



驚き慌てふためくキトラにジェイドは冷たくフッと笑うと自分を嘲るように言い放つ。






「俺は部隊を離れた人間だ。
つまり反逆者って訳だ。

そしてお前は、部隊の人間。
この状況の意味........分かるかい、キトラ?」


「────」




何か言おうとするキトラ。

だがその口から紡ぎ出されようとした言葉は割って入ってきたジェイドの言葉により、掻き消される。






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