mirage of story
「────敵なんだよ、俺達は」
―――。
放たれた言葉は大きく重くその場に、そしてキトラにのし掛かる。
「......追う者と追われる者が馴れ合うなんて世界、そんなもんねぇのさ。
お前は俺の俺はお前の────敵なんだよ」
続けるように響くその声は立ち尽くすしか出来ない彼に追い討ちを掛けた。
「.........何言ってんだよ、兄貴。
俺は兄貴の敵じゃない!
隊長達にも言わないし、兄貴を傷付けもしない!」
キトラは叫ぶ。
それはもう必死に。声の限りにただ叫んだ。
「兄貴のためなら、俺.....俺も部隊を抜けます!
だったら俺は兄貴の敵じゃ────」
「ふざけたこと言うんじゃねぇ!」
必死に叫ぶキトラ。
その言葉があまりに必死すぎて見ていられなくなったジェイドは、目を背けながらそれを掻き消す。
「駄目だ。
.......お前は俺みたいに道を踏み外しちゃ駄目だ」
キトラから逸らしたジェイドの視線。
――――。
その視線を彼は意を決して、キトラの方へと戻した。
「兄貴───」
そのジェイドの瞳があまりにも切なくてそして優しくて、キトラは思わず魅入ってしまった。
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