mirage of story
 



 
 
 

――――。
そんな何とも和やかな空気が流れる。


そんな中でハッと冴え返る記憶。

そうだった。
今はこんな風に和んでいる場合ではないのである。









「ん?」



カイムは首を傾けて彼女を見る。







「カイム、あのね!急いで此処を出なくちゃいけなくなったの!
だから早く支度をしなくちゃいけなくて―――」


「え、支度って?」




シエラは、ジェイドに言われたことを思い出して口に出す。

だが何も知らないカイムには説明が少なすぎる。
彼は何のことだか分からないと言った風に首を左右に振る。













「あのね、此処に案内してくれた人が居たでしょ?ジェイドさんって人。

そのジェイドが、早くこの街から逃げろって。
それで――――」




「?
逃げろって.....え、まさか俺の寝てる間に何かあったっていうのか!?」 



「...........えっと、多分何にも無いと思うんだけど。
ただ私とジェイドさんが話してたら、誰かが此処に来て、それで何かその来た人とジェイドさんが知り合いみたいで.....」




疑問の視線を送るカイムに、シエラは何とか状況を説明しようと言葉を紡ぐ。

だが彼女自身も"逃げろ"と言ったジェイドの意図が判らない身。
うまく説明出来るはずもなくて、言葉に詰まる。











「──────何かよく分からないけど、まぁつまり早く逃げろって」







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