mirage of story
 



 
 
 
 
 
「────こいつが目を覚ます前に、俺も何処かに逃げねぇと」




相手に敵意はない。
とはいえ、油断は出来ない。

甘く見たら最後、反逆者であるジェイドの命は一瞬で危ういものとなるだろう。




つい半年前まで、自らもその中に居たジェイドの腕もかなりのもの。
普段はそんな感じを全く匂わせない彼だが、その実力はあの部隊の中でも一二を争う戦闘能力がある。

だが、部隊の者達の腕もかなりのもの。
そんな強者たちが束になって掛かってきたら、きっと一溜まりもない。





――――。

そんなことを無意識のうちに想像してジェイドは顔を歪めた。










「こんな俺だって、死ぬのは御免だからな───」



そう小さく呟くと、もう一度キトラの方に目を向けて声には出さずに別れを告げる。

半年前、自分が彼の前から居なくなる時と同じ別れの言葉を。















ガチャッ。


そんな声にもならない別れの言葉から数秒後に静かな部屋の中で扉の開く音が響く。

そして背後から響いたその音に、ジェイドは軽く振り向いて言った。








「嬢ちゃん達、遅い遅い。
急げって言ったろ?」




ジェイドには振り返る前にもうその音の主が誰か分かっていた。









「ジェイドさん」



ジェイドの後ろで開いた扉から出てきたのはシエラとカイム。







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