mirage of story
辺りを支配してゆく闇。そして復讐に燃えるライルの心。
どちらも暗さの中に、哀しみの色を帯びる。
その二つはまるで重なり合うように、酷似していた。
「......この戦い、きっと正義は俺達魔族に在る」
囁くように、ライルは言う。
「神だって、俺達の味方をして下さるはず。
.......ルシアス。
お前だって、俺達の味方となってくれるだろう?」
囁く。
その囁きが薄く響く中で、ライルは手を天へと突き出して空を掴んだ。
その手は当然の如く宙を切り、中には何もない。
――――。
手応えのない結ばれた拳を、ゆっくりと一本ずつ指を解き放っていく。
やはり手の中には何もない。
だがライルの目にはその手の中に一つ在るものが映った。
それは幻覚なのか。
それとも希望か。
手の中にあるのは、そう勝利への希望の燈だった。
「.....行くか」
ライルは手の中にある見えない光を握り締めて、再び足を前に踏み出す。
疲れ切った足。
だが胸に宿った希望が前に運ばせた。
行く先は人溢れる、夜の街。
ライルはその人混みに多少の嫌気を感じつつ、決心したように息を飲み込んで、その中へと消えていった。
.