mirage of story




 
 
 
 
 
「────少し人捜しをしていて.......勝手にお店に入ってしまいました、すみません」



キトラは、自分の立場をはっきりさせようと口を開く。

相手が年上ということを考慮して敬語を使うところは、歳に似合わずなかなか律儀である。








「ほぅ、人捜しかい。

兄ちゃん、どっかの軍人さんのようだが.....その命令かい?」



そんなキトラに、店主は少しだけ疑うような視線を向けて探るような口調で言った。









「.....いや、えっと───」




キトラは、その質問に答えるのを躊躇った。

軍人なるもの、部外者への任務の公言は禁じられている。
だがこういう場面を上手く乗り切るのは、素直な彼にはまだまだ難しい。






「えっと......」



思わず黙り込んでしまった。
まぁ黙り込んでしまった時点で、命令での人捜しということは店主には予測が付いてしまったのだが。






「いや、言いたくねぇならいいさ。

ハッハッ!軍人さんにも、色々あるだろうからな」




黙り込んでしまったキトラ。
その様子に、店主はフゥッと息をついて愛想笑いのような微笑を見せた。

あんまり困った表情を面に出す彼を、哀れに思ったのだろう。











「────あ、そうだ。兄ちゃん。

お前さんが此処に来た時、長い髪の兄ちゃん居なかったか?
あと綺麗な水色の瞳をした嬢ちゃんと紅い瞳をした兄ちゃんもだ。

どれもうちの客なんだが......やっぱり見当たらないねぇ」







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