mirage of story



 
 
 
 
言及することは止めようと、店主は彼が何故此処に居るかという話題を流し店主にとっては本題である話へと戻す。







「ッ!」



長い髪の兄ちゃん。
その言葉に無意識のうちに反応する。


だが、その微かな反応に気が付かない店主はそのまま言葉を続けた。









「ジェイドって兄ちゃんだ。

嬢ちゃんは確か.....シエラとか言ってたな。
もう一人の兄ちゃんの方は.......」



ジェイド。
店主の口から、キトラが予想した言葉が出る。






「ッ!
あ、あの!もう一度言ってもらえませんか!?」



説明する店主に聞き返した。

勿論出てくると予想をしていた兄貴の名前を聞き返したというわけではない。
何かを聞き逃したという訳でもない。

ただ、ただどうしても聞き捨てならない言葉がフッと彼の意識に引っ掛かったからである。










「ん?兄ちゃん達の名前をか?

えっとなぁ、髪の長い兄ちゃんがジェイド。
嬢ちゃんの名前が確か........」





ッ。

店主の何の変哲もない言葉。
なのに異様に彼の心臓は激しく脈打つ。









「嬢ちゃんの名前は確か......シエラって言ったかな」







.
< 535 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop