mirage of story
〜3〜








「走れ!」



ッ。
一人の男に連れられて少女と少年は、夜になっても活気溢れる街中をひたすらに疾走していた。








「ちょっ、速いです!」



その足の速さはかなりのもの。
シエラとカイムは前を行く彼に、ジェイドに向かって叫ぶ。


この人混みの中を、よくもあんな速さで走れるものだ。
人と人との間をすり抜けて前に進むだけでも大変だというのに。







「すまねぇな。
そんなゆっくりしてる暇はないんだよ。

一刻も早くこの街から出ないといけないんでねぇ.....もうちょっと辛抱して走ってくれよ、お二人さん!」



そんなシエラとカイムの叫びにジェイドは、後ろを振り向かずに速度を緩めずに言う。







「そ....そんなに急ぐ程のことなんですか?
俺たちが逃げなきゃならない理由っていうのは」


息を切らしながら、カイムも会話へと参戦する。






「だから、それは後でゆっくり話すって言ってるだろう?
今は走るのに集中しろって、体力が保たなくなる」



「あ....後でって」




カイムは一番重要なことをジェイドに後回しにされている気がして食い下がろうと口を開くが、どうしても息が保たなくなって言葉を飲み込んだ。

話すことで、体力の消耗に拍車が掛かるらしい。
息が余計苦しくなる。

......。
今は彼の言う通り、大人しく走ることに集中するのが一番のようだ。







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