mirage of story

 
 
 
 


――――。
つい数分前のことであった。

二人はいきなり宿屋へと現れた少年をきっかけに、ジェイドに推され今日着いたばかりの宿屋を飛び出すこととなった。



理由は未だに不明。
だが、逃げろというその言葉に従わなければという何処からともなく沸く根拠の無い使命感と、彼の勢いに二人は考える暇もなく今街の中を疾走している結果となった。



逃げる理由は、逃げている今も分からない。

今此処で足を止めてあの宿屋に戻っても、ジェイドを無理矢理に問い詰めてもいいのだが。
ジェイドに引っ張られ勢いづいた足は、そう簡単には止まりそうはない。









「とりあえず、このまま逃げるしかないみたいだな。シエラ」


「そ、そうみたいね。
それにもう此処まで来ちゃったもの、仕方無いわ」




緩まることのないスピードに、多少の慣れを感じてきた二人は、このままジェイドへ付いて行くことに改めて観念したように、互いに顔を見合せ笑う。











「ハハッ、いいねぇ!
やっぱり若いってのは!」



そんな二人の様子を、いつの間にかこちらを振り向いていたジェイドが言う。





「だ....だから、そんなんじゃありませんって!」



ジェイドの怪しい笑みに、二人声を合わせて否定。
なかなか息が合っていることに少し驚く。





 

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