mirage of story
相手を欺く笑みを浮かべるジェイド。
それに対して、ライルはフッと嘲笑うような笑いを溢す。
「反逆者の魔族と逃亡者の人間。
.......さて、それの善良な一般市民と言える?
なぁ、ジェイド?』
反逆者。
逃亡者。
その言葉がライルの口から出る。
その時点で、ジェイドは確信した。
(.........もう全部知ってやがるのか)
そう。
ライルはもう知っている。
今此処に居る三人の正体を、もう知っている。
それを知った上で彼は、彼の率いるこの不穏な者達は彼等が背負う"任務"を果たすために此処に居る。
(キトラか......)
恐らく宿屋で再会した、彼がライルに伝えたのだろう。
彼は、あぁ見えてももう立派な軍人だ。
ジェイドは心の中で苦笑した。
「...........そこまでバレてちゃ白ばっくれられないねぇ。
さすがは隊長さん、いやー仕事が早いね。ハハッ!」
白を切る必要がなくなった。
そう確信したジェイドは、一つ溜め息をつくとフッと諦めたように笑うと、無造作に自分の顔を隠しているフードに手を掛ける。
「ジェイドさん!?」
その予想外の行動に焦る二人の声。
「大丈夫だ。
でもまだお前達は被っとけ」
その焦りの言葉を発する二人とは対称的に、ジェイドは冷静に短い答えを返す。
スッ。
ジェイドが手を掛けたフード。
それが、一瞬の躊躇いもなく取り去られる。
もうこれ以上、顔を隠す意味はない。
そのせいか、やけにあっさりと取り去られたフードの下で長い銀髪が流れるように揺れる。
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