mirage of story




 
 

 
 
ジェイドは軽く笑いを浮かべたまま。
だが少しだけ跋が悪そうに彼等から視線を外して言う。



――――。
そんなジェイドから発せられたその言葉を理解するのにシエラたちの頭は、一瞬思考が停止する。










「魔族の、軍人―――」



止まった思考が再び動き出した時、一気に疑問と混乱が流れ出す。







「残念ながら嘘じゃない。
つい数ヶ月前まで俺はこいつらと一緒、軍という下らない括りの中で共に戦っていた。
魔族の敵....つまり、人間とだ」



「なっ!」





「だが俺は数ヶ月前.....とは言ってもだいぶ昔から思ってはいたがあの場所に在る薄っぺらい正義が信じられなくなってね。
何の罪もない、無抵抗な人間を殺すなんて正義が信じられなくなった」




二人は、驚きを隠せない。

その驚きを近くに感じながら、ジェイドは続けて言葉を紡ぐ。








「だから辞めようと思った。
自分の信じられない正義の元で人間達と戦うことは、ただの人殺しにしか思えなくてね―――だから俺はその柵から抜け出すために逃げた。

軍という括りから、魔族から。
そして自分自身からも」




ジェイドの声が、闇に染まる空を貫き辺りの空気を震わす。


――――......。
その声は顔に浮かぶ笑みとは反対に、あんまり悲しくて。
周りに居る者は皆、敵であれ味方であれ言葉を飲み込んだ。











「で、皮肉なことに今は俺はただの反逆者。
しかも命まで狙われてるっていう、まったく酷い仕打ちだねぇ」







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