mirage of story
 
 
 
 



確かに、酷い有り様だ。

死。
そう彼女に思わせてしまったことも、この姿であるなら納得出来る。









 
「───大丈夫。
俺は死なないよ、シエラを置いては....絶対に」



――――。
そんな彼女の涙を、スッと上げられた血に塗れた手の平で自らに対する苦笑と共に優しく拭う。


ッ。
まだ乾き切っていない血が彼女の頬を濡らす。
だがその冷たさよりも彼の温かさの方が彼女には染みた。










「────ッ!」



彼女の涙を拭い去ったカイムの手。

暫くしてその手はゆっくりと彼女から離れ、それからグッと倒れた自らの身体を起こそうと地に突き力を入れる。


ッ。
だが傷付いた身体は思うようにならなくて結局また体勢を崩して地面へと伏せてしまう。

あぁ、何て情けないことだと彼は一層に苦笑する。








「ちょっと!
無理をしては駄目よ!そんなに血だらけで....あんまり動いたらまた血が」




そのカイムの姿に、悲鳴に似た彼女の叫び。

彼女のか細い手に再び倒れ掛かった彼の身体が受け止められる。








「.........大丈夫さ、これくらい。

確かに俺は血だらけだけど、これは俺の血じゃないよ。相手のだ。
安心していい。
この酷い見た目程、俺の怪我は酷くはない」



「でも.....」





「大丈夫。

ねぇ、シエラ?
今は俺なんかのことより、これからどうするか考えなきゃならない。違う?」




カイムは軽く彼女を安心させるように笑みを見せる。


........。
ッ!
それから彼は自分を支えてくれる彼女の手を優しく退けて、もう一度自らの力で身体を起こして立ち上がる。






 
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