mirage of story



 
 
 
 
────.....。
暫くして視線を戻せば、もうそこには轟く大地も逆巻く風も何も無かった。

そしてさっきまで此処に居たはずの彼の友の姿も、もう其処には影も形さえも無くなっていた。









「.....すまねぇな、ライル」




ジェイドは何も無くなってしまったただの大地に一言そう呟くと、今まで彼が居たはずの場所に背を向けた。













「────ジェイドさん!」



背を向けその場を立ち去ろうとする。
その彼に遠くから駆け付けてきたシエラとカイムの声が響く。

丁度良い頃合いだ。
二人が駆けてくる姿に、彼は気持ちを切り替え一つ息を吐き落とす。







「おぉ、嬢ちゃんたち!ちゃんと生きてたか!


あいつら相手にして無事とはねぇ......なかなかやるじゃないの、お二人さん?」




自分の名を呼ぶ声。
呼ばれる彼は微かに浮かべた哀愁の意を心の奥へと押し込めて、ヘラッと軽く笑いながら二人の元へ歩む。







「って無事では無いみたいだなぁ、おい。

カイムよ、そんな血だらけになっちまって。
ふぅ、奴等にやられたのかい?」



「....少しだけ」




歩み寄るその途中、近付きはっきりしてくる二人の姿にジェイドはフッと表情を変える。


――――。
目に入ったのは、全身を血で紅く染めたカイムの姿。

ジェイドはそんな彼の様相に少し驚いた表情を見せ、カイムはその反応を前に情けない表情を返す。









「.....まぁ、生きているだけでも上等さ?
ああ見えても奴等は結構な強者揃い―――ハハッ!何せ俺の居た部隊だからなぁ?

さぁ、お二人さん。
今なら敵さんもどっか行ってるようだし、逃げるなら今の内だと俺は思うがどうだい?」







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