mirage of story



 
 
 
 
力。魔力。
そうそれは強かれ弱かれ、魔族で在れば必ず持ち合わせて生まれるはずの力。

――――。
だが今のライルにはその魔力が存在しない。





普通、指輪の契約者となる者は世界を揺るがす程の強大な魔力を持つ者であることが今までの歴史の中の常である。
それが古から伝わる伝説であり、揺るぎない事実であるはずだった。


ッ。
だがその常識はライルによって覆された。

幼少の時から魔力が無いと云われ続けていたライルが竜刻の指輪の契約者となり、竜に認められるなどということは異例すぎること。
考えられないことなのだ。









"お前には魔力がある"
炎竜は彼に初めて会った時、確かにそう言った。



だが、どうだ?
その魔力は抑えられていて発揮されないでいる。

発揮されるのは、解き放たれるべきその時が来た時。
それまでは炎竜との契約は周りには告げず、今まで通り魔力がないままで生きていかなければならない。

それが炎竜との契約だったから、彼は今までずっと魔力を使えない重荷を背負って生きてきた。






.....。
でも。







(ジェイドと俺の力は互角だったはずだ。
むしろ剣の腕では俺の方が勝ってた。

なのに、なのに.....)




ライルは拳を握り締める。






(それなのに、俺は負けた。
あいつの魔術に、為す術が見つからなかったんだ。

もし俺に魔力があったなら、俺は決して負けたりなどはしなかった!)




込み上げる感情に、拳に思わず力が入り力が込められた手の平から、一筋の赤い線が伝う。

ツウゥッ。
それはライルの悔しさからなる、赤い血の涙。
一筋の赤が痛々しく煌めきを放つ。







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