mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
すると、今まで何も存在しなかった空間の中に一筋.....蒼い光が。

その光が天高くから一筋に、まっすぐと聳え立っていた。







「お主は.....あの水竜の指輪に宿るという、水竜か?」



その聳え立つ蒼い光を見て、王はハッとした。
そして確信に近いような何かを抱いて、その蒼い光に向かって問い掛けた。

姿はない。
だが、その人には何処からか確信が溢れてきた。








『――――そうだ。
我が名は水竜.....指輪の中に眠りし竜である』



声の主。つまり水竜は自分の名を呼ぶその声に、暫らくの沈黙を経て答えた。




その次の瞬間に、天からの蒼い光は唐突に翻り滑らかな円を描き始める。

――――ッ。


そしてその蒼い光が織り成す円はやがて竜の姿へと変貌し、何もない空間に美しくも気高きその姿を刻む。
周りには目に見えこそしないが、神々しい光のような何かが竜の周りから溢れ出ていた。








「―――ッ」


姿を現した水竜。
その水竜の、この世のものとは思えぬ程に美しい姿に魔族の王であるその人から言葉が失われる。

ただ食い入るように、大きく開いた眼に蒼き竜の姿を映し出す。
先程あの指輪に何か引き付けられるようなものを感じたが、そんなのとは比べものにならないくらい竜の姿は、その人を捉えて放さなかった。







 
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