mirage of story
『..........我々は、我々竜はその美しきものたちを絶やさせないために、この身を封じた。
この美しき―――そして儚き世界を守っていく、そのためにこの世界の表側から退いたのだ』
美しきものを守る。
世界を守る。
そうである。
竜たちが、この世界の表舞台から姿を消したのは、他でもないこの世界のため。
一度は人の手によって崩壊した世界。
そんな世界に、再び崩壊の時が訪れないように見守るため。
そしてもし再び世界に崩壊の時が訪れてしまった時に、全力でそれを止めるための力でこの世界に存在し続けるために。
『我々はこの世界を、汝等"人"に託した。
.....我々は、その時が来る時まで汝等を見守り続ける存在で在り続けると―――そう決めたのだ。
例えその存在が忘れ去られようても、その決意がある限り我々の存在が消えることはないのだよ』
「......」
魔族の王であるその人は、暫らく声を出せずにいた。
何処か竜の威厳というか尊大さ溢れる水竜の言葉とその姿に、人であることに対する何か劣等に似たものを魔族であるその人に感じさせた。
この世界。
竜たちが表舞台から姿を消した後、人は我が物顔で世界を支配してきた。
世界の中で人が最も高等であり、世界を治めるに相応しいのは人である。
そんな不条理且つ愚かな勘違いの中で、人は生きてきた。