mirage of story
人と深く関わり合わない。
その言葉に水竜の前に跪く魔族の王であるその人は、城の倉庫の奥底で見つけたあの埃だらけの指輪を思い出す。
埃が積もった指輪は、何十年も....そして何百年も人の目に晒されることなく静かに眠っていたことを物語っていた。
そして指輪はそのまま、誰にも見つからずにただの薄汚れた指輪のままであり続けるはずであった。
それなのに。
『――――だが、今またこうして指輪は人の元へと渡った。
やはり、我等と人は離れられぬのだろうか。
運命とは....恐ろしい』
水竜から恐ろしいという言葉が出る。
だがそういう水竜の口調からは恐ろしいというものが感じられず、少し皮肉にそして何か楽しんでいるようにさえ感じられた。
「.......」
そんな水竜の言葉に、魔族の王である人は黙り込む。
『気に病むことはない。運命とは必然的にやってくる、そういうものだ。
我等と人が再び関わり合う運命にあったとしたならば、我等はそれに従うだけ。避けることは出来ない。
だが我等が出会った運命の先に、また再びあのような悲劇があるとするならば、なんとしてでも変えねばならぬ』
「......」
『人よ、我は問おう。
お主がこの世界に望むのは―――平和か?それとも破滅か?』