mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
「ふぅ....凄い風だったな。
おい、嬢ちゃん―――って大丈夫かッ!?」



風で乱れた髪を手櫛で直しながら、ジェイドは自分の後ろで一緒に本を見ていたはずのシエラを振り返る。

するとそこには、風で大いに乱れて顔がバッサリと隠れたシエラの姿があって、ジェイドはギョッとして声を張り上げた。







「だ....大丈夫です」



ボサボサになった髪を、懸命に直しながらシエラは答えた。
シエラのオレンジがかった茶色の髪で隠れた顔。髪を何とか掻き分けて、その間から彼女の澄んだ水色の瞳が覗く。








「.....さぁて。
でもよ、嬢ちゃん。今まで読んだとこで大体の指輪に関する歴史は分かっただろ?
嬢ちゃんの持ってるその指輪が、どんなもんだってことが」






「―――はい。
この指輪がそんなに昔の時代から魔族に伝わっていたものだったなんて....私、知りませんでした。
そんなに凄い指輪だったなんて」





「まぁ、魔族に伝わってきたって言っても俺みてぇな庶民には遠い存在で、そんな実感はなかったけどな。
....でも凄いことには違いねぇ。あのロアルのおっさんが、あんだけ欲しがってんだからな。力を得ることに関しては、手段選ばねぇんだ。あのおっさんは」




ジェイドはわざとらしく渋い顔をしてみせそう言うと、手に持っていた本を近くにあった机の上に置いた。

カタンッ。そう音を立てて置かれたその本。
その本は深緑色の布地の表紙をしていて、その表紙には金色の糸で"新世界白書"と縫い付けられている。





 
< 678 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop