mirage of story
そうだ。
この街に彼等が馴染まないのは仕方のないこと。
此処メリエルという街は、知識の集う街として世界に名の知れた街。各地から学者や博識高い者達が集まる文化の街。
だからこの街に住む者達は、文化的というか妙に落ち着いているというか。
旅人がたった数日で馴染めるような、そんな雰囲気ではないのだ。
「あ....でもカイム。
此処って、人間と魔族が一緒に住んでるんだよね?
私達、こんな堂々とそんな街の中を歩いてて大丈夫なのかな?」
そして此処メリエルは、今のこの世界の情勢の中では珍しい人間と魔族が共に住む街でもある。
互いに対立し合い、ましてや殺し合いをもしている二つの種族。
普通ならその二つが同じ街の中で暮らしているなど、考えられないはずなのだが、この街ではその考えられない環境が実際に確立されている。
「あぁ。
でも一緒の街に住んでるとは言っても、人間の住む区域と魔族の住む区域はさっき俺たちが居たあの中央の建物を境に北と南に隔離されてるみたいだから、大丈夫。
それに此処には元々、学者とか争い事を好まない文化人が多い街だから。
俺たちが知っているような争いは、この街では無いみたいだよ」
興味深気に街を見回していたカイムは、パッとシエラを振り返りそう言うと穏やかな笑みを浮かべた。