mirage of story
〜2〜






「......真っ昼間から手なんて繋ぎやがって。
ヒュー。おとなしい顔して、なかなかカイムの奴もやるねぇ？」





気まずい空気に、シエラとカイム二人手を取り落ち着いた街道を歩いている、丁度その頃。


その様子を一人、窓ガラス越しに眺め呟く者が居た。


笑いを含んだ声が、目の前の窓ガラスを曇らせる。

そんな曇ったガラスを服の裾を引っ張って拭いてやると、その人ジェイドは窓に背を向けた。






窓に背を向け、彼の目に入るのは沢山の本の山。

部屋の床の所々に、本がズラリと積み上げられ妙な圧迫感を覚えた。
此処はそれなりに大きな部屋であるはずなのだが、何だか窮屈に思えてジェイドは呆れたような溜め息を落とした。








「......ったく、此処は相変わらずだねぇ」



相変わらず。
そんな言葉が呆れたような顔をする彼の口から零れる。




そう。
この場所は、彼ジェイドにとって初めての場所ではなかった。


前に来たことのある場所。
それも一度だけじゃない。何回も来たことのある場所だった。






思い出されるのは、今と同じの本だらけのこの部屋。

そして本の中に埋もれるようにして、この本達を片っ端から読み尽くす.....この部屋の主の姿。







「.......そんなに昔のことでもないのに、すげぇ懐かしく感じるもんだな」





　
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