mirage of story







ジェイドは染々と思う。




この場所は、ジェイドがまだ魔族の側――――つまりはライルたちの居る部隊の隊員としてシエラたちの敵であった頃、よく出入りをしていた場所だった。



知識の街メリエル。
その中枢であるのが此処。街の真ん中に聳える中央図書館である。


このメリエルという街は、昔から人間と魔族互いに関する重要な歴史的資料の保管場所とされていた。

故に人間も魔族もこの街に下手に手を出すことは出来ない。
下手に手を出せば、自分達にとっての大切な財産も失うこととなるからだ。




つまり、此処は人間のものでも魔族のものでもない。

この世界で唯一の、互いの力の及ばない不可侵領域なのである。







そんな街であるメリエルには、万が一の争いを防ぐために居住区は分けられているものの、人間と魔族が混在して暮らしている。



北側が魔族側。
南側が人間側。

そしてこの街での居住区の境が、そのまま延長線で人間の国と魔族の国の国境となっていた。






この街の立地条件が、山と山の間に出来た平地ということもあり、街を囲う高い壁がそのまま国境に添い北と南に分断している。

その壁は街から離れた両端の山の端までずっと続いている。
国境を越えるためには各所に置かれた関所を通るか、この街を通過するしかないのだが、いずれにせよ膨大かつ面倒臭い手続きが必要だった。






 
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