mirage of story
その面倒臭いかつ膨大な手続きを嫌い、人間と魔族の間を行き来する商人たちは両端にある山を抜けて国境を突破する者も居る。
だが、山は起伏が激しく更に獰猛な獣達の棲み家であるためリスクが大きく、そういう者は多くはない。
その他にも大胆に大回りをして行けば、国境を越える方法は幾らかあるのだが、どれも過酷。
砂漠を越えたり、海のような湖を越えたりしなければならない。
しかも国境を行き来するのはほとんどが商人。
そのような時間も勿体なくて、この方法を取るものも数える程に少なかった。
それに対して、このメリエルという街や関所を越えるにはリスクも時間もそれなりに少なくて済む。
それ故にこのメリエルという街は、知識という街の顔の他に魔族と人間の国々を繋ぐ通過点という顔も持っているわけである。
ついでに説明をしてしまえば、この街へと来る前にジェイド達のいたアトラスという街は人間と魔族の国境線の上に広がる広大な砂漠の中にある。
領土上で言えば、魔族の土地なのだが商人の街であるために国の境が曖昧になっている。
この街メリエルが互いに力の及ばない不可侵領域と言ったが、ある意味ではあのアトラスという街も同じかもしれない。