mirage of story
「ジェイドっ!
貴方、無事だったのですね.....っ!」
鼓膜を震わせたその声に、セシルと呼ばれたその女性はようやく現実を把握したように感極まった声を上げる。
そして、じわっと碧い瞳を潤ませてそのままジェイドへと駆け寄り、抱きついた。
「う....おっ!
は、離れろ!いきなり抱きつくんじゃねぇよっ」
不意を突かれ、いきなり抱きつかれたジェイドは、そのままバランスを崩しソファーの上へ。
押し倒されるような形になって、女好きで女には馴れているはずのジェイドも、さすがにドギマギしたように顔を少しだけ赤らめる。
じたばたと抱き付くセシルを離そうとするジェイド。
普段、彼女はこんなことをしないような性格だと知っているジェイドは戸惑いを隠せずに居た。
だが、それでも彼女はジェイドの上に覆い被さるようにして胸の辺りに顔を埋めたまま離れない。
「.............心配していました。貴方が部隊から逃げたと聞いて。
生きていらっしゃったのですね――――よかった、本当によかったです」
その声は涙声だった。
ジェイドの胸に服を通して、じんわりと温かな感触が伝わってくる。
涙なのか彼女の温もりなのか、それはどちらかは分からなかった。
けれど、ジェイドはその温もりにじたばたするのを止めて少しだけバツの悪そうな顔をした。