mirage of story
「.........」
そしてジェイドはそのままので数秒間黙り込む。
そしてその後、倒れ込んだ身体を自分の上に居る彼女を抱え込んだ状態で体制を立て直し立ち上がる。
本が迫り来るような部屋の中で二人。
ジェイドは自分の胸元で泣くセシルの肩に、スッと手を回し自分の元へと抱き寄せた。
フワリ。
抱き寄せた彼女の髪から、芳しい芳香がジェイドの鼻をくすぐる。
「.......悪かったな。心配をかけて」
セシルを優しく抱き寄せて、彼女の頭をポンッと撫でてやるジェイド。
その声には、いつものあの軽い感じは何処にも無かった。
バツが悪そうに歪んだ彼の顔は次第に安らかな表情に変わり、そのまま暫らく止まったように静かに流れる時の中で彼女を抱き締めた。