mirage of story
そんな彼女を、ジェイドはまじまじと見つめる。
淡い金色の長い髪。
二重で大きくぱっちりとした、何処かあどけないような碧眼。
歳は恐らくジェイドと同じか、少し上。
だが彼女の持つまるで少女のようなあどけなさと、見るもの全ての心を洗ってしまうような透明感が彼女を幼く見せている。
つまりだ。
一言で言ってしまうと、彼女はとても美しかった。
そんな彼女に、ジェイドは思わず見惚れてしまっていた。
「最近よく此処にいらっしゃるのをお見掛けするので、どんな方なのかとお話してみたかったのですっ!」
だがセシルはそんなことには全く気が付いてはいないようで、淡い金色の髪を揺らしながらニコッと少女のように、でも何処か落ち着いた雰囲気で笑う。
そしてそのすぐ後に、何かハッとしたように碧い目を見開いてまた口を開く。
まだ自分が、名乗っていなかったことを思い出したのだ。
「申し訳ありません......名乗るのが遅れてしまいました。
私、セシルと申します。
この図書館で司書官の見習いをやっている者です」
ふわり。
セシルは舞うように一礼して、またジェイドに笑いかける。
その拍子に乱れた髪が、サラサラと流れるように元の位置へと戻る。
その髪からは、芳しい香りが舞った。