mirage of story
「何だ、あんた此処の人か。
ふぅ。いきなり現れたんで、幽霊かと思ったぜ」
ふわりと笑う彼女に、ジェイドは警戒と戸惑いを解き彼の特徴とも言える軽い口調で彼女に口を開いた。
「驚かせてしまったようでしたら.....ごめんなさい」
「いや、謝ることなんてねぇさ。
此処の見習いだって言ったかい?
俺はジェイド。見ての通り魔族側の軍人だよ」
ジェイドはグッと背筋を伸ばすように伸びをすると、改めて彼女を見直して笑った。
ヘラッとしたその笑いは、今もこの時も変わり無い。
ただその笑いの裏にある何か闇に似たものは、明らかに今の方が濃くなっていた。
「ジェイド様?」
「様なんていらねぇさ。
軍に居るって言ったって、やる気のねぇ弱小の部隊の隊員だしな。
事実、今もこうやってサボってるわけだし」
「サボり途中なのですか?」
「あぁ、そうさ?
あ、説教とかは受け付けねぇよ?
この世の中、たまには息抜きでもしねぇとやっていけないだろ」
ハハッと、ジェイドは悪戯に笑ってみせた。
セシルはそんなジェイドに、まぁ....と少し怪訝そうに言いながら彼を暫らく見つめる。
サボりということで何か言うのかと思ったが、彼女は何を思ったのだろう。
次の瞬間、彼女はニコリと笑って言った。