mirage of story
「ふふふ。
あら、偶然。私もです」
「......はい?」
私も?
その言葉の意味が分からずに、ジェイドは反射的に聞き返していた。
「ですから、私も同じです。
実は私もサボり途中なんです」
「え.....」
聞き返すジェイドに、セシルはにっこりと笑って言った。
少し悪戯に、まるで子供のように笑った。
「だって周りにこんなに大好きな本があるのに、おちおち仕事なんてやってられないんですもの。
息抜きしないと、やっていけません」
フフフッと笑う彼女に、ジェイドは思わず面を食らってしまった。
今まで星の数ほどの女性と出逢い、その女性を尽く口説いてきたジェイド。
口説いては振られ、女好き故の沢山の修羅場を越えてきたジェイド。
そんなジェイドの中で彼女は、今まで会ったことのないような女性だった。
だからだろうか。
ジェイドは凄く、そんな彼女に惹かれた。
「あ、でもこれは秘密です。
ばれると色々とうるさくて」
薄い桜色の唇の前にスッと人差し指を立てて言うセシル。
その可愛らしい唇から零れる吐息が、彼女の髪をフワリと微かに揺らした。
そして彼女の髪を揺らした吐息は、彼女の髪の芳しい香りを纏ってジェイドに届く。