mirage of story






正直、クラッと来た。
胸が、今までに感じたことのない程に速く脈打った。




これまでジェイドは何人もの女性と付き合って関係を持ってきた。
だが、こんな気持ちは初めてだ。

やはりこのセシルという女性は、何かが違う。





この感情はなんなのか。

それは分からなかったけれど、ジェイドは彼女のことをもっと深く知りたいと思った。
.....彼女を手に入れたい。そんな欲望が奔った。









「.......セシルちゃん、だっけな?」


「はい。ジェイド様」



名前を呼ばれ、にこにことした顔で答えるセシル。


そんな彼女にジェイドは、不意に顔をグイッと彼女へと近付ける。

相手の顔が目の前にあり、吐く息が髪を揺らし肌に生暖かい風が伝わる。
ジェイドの紅い瞳が、悪戯に煌めきを放ちセシルを見つめる。






「ジェイドでいいさ」



ジェイドはその近い二人の間の距離を、じりじりと更に狭めていく。



近付く。
さらに近付く。

そして唇が、二人の唇が触れるかと思う程に二人の間の距離が縮まる。
ジェイドとセシルの瞳が重なる。








自分で言うのも何だが、ジェイドは自分の顔はそう悪くないと思っていた。


少しだけ鋭い紅い瞳に、スッとした顔のライン。
白すぎも黒すぎもしない肌に、いつも悪戯っぽく吊り上がる口元。




自信過剰かと思われるかもしれないが、実際に女性受けもいい。

性格は多少の難はあるだろうが、それでもジェイドの姿は女性を惹き付ける魅力があってその魅力に落とされた女の数は知れない。





 
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