mirage of story





スッ。

飛び離れたジェイドに、セシルの白く細い腕が伸びてジェイドの額へと触れた。


ひんやり冷たい。
でも、人肌の温かさと柔らかい肌の感覚がジェイドに伝わる。








「熱はないみたいですけれど.....どうしたのでしょうか」



セシルはそう言うと、また不思議そうな瞳でジェイドを見つめる。



それとともにジェイドの顔はより紅潮して、ジェイド本人は異常な自分の反応に困惑した。



自分が、女性への免疫がありすぎる程のこの自分が......たった一人の女性を前に、どうしてこんな風に?
そして気が付けば、胸の鼓動が異常な程に早くなっていて。
彼女をまともに見ていられない自分が居て、ジェイドの困惑をより深めた。









(........これじゃあ、まるで――――恋みたいじゃねぇか)




恋。
ジェイドの中に、その二文字の響きが谺した。





今まで何人もの女性と付き合いをしてきた彼だが、実は恋というものをしたことが無かった。



こんな風に言えば悪く聞こえるかもしれないが、今まで女性と付き合ってきたのは全てが単なる気紛れのようなもので。
ジェイドの中では、ただの遊びのようなものに過ぎなかったのだ。



別に誰かと本気で愛し合ったわけでも、誰かを本気で愛したかったわけでもない。

ただただ一人で居るのがどうも淋しくて、一緒に居て自分と戯れて孤独な日常を埋めてくれるのなら.....正直、相手なんて誰でもよかったのかもしれない。






 
< 702 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop