mirage of story
「.....はぁ。
セシル。客人が来るっていうなら、逆に普通片付けるだろ?」
「あら。
でも貴方は、そのような気遣いは嫌うでしょう?ジェイド」
笑って言うセシルに、ジェイドは少しだけ面を食らったような表情を浮かべる。
それからまた、顔にいつもの軽い感じの悪戯な笑みを浮かべて、ジェイドは言う。
「まぁ.....そうだな。
此処が相変わらずのきたねぇ部屋で、正直ホッとした。
......変わりはねぇみたいだな」
「女性の部屋を汚いだなんて酷い。これは、ほんの少しだけ本が床に散乱しているだけです。
これはこの部屋の、インテリアみたいなものなんです」
セシルはジェイドのからかうような言葉に、笑いながら答えた。
そしてそれからそのままの声と表情で、でも少しだけ嬉しさと哀しさが交ざったような色を濃くして続ける。
「......えぇ、あれから何も変わりはありません。
ジェイド、貴方が居なかったこと以外は何も」
「――――そうか」
穏やかなセシルの声。
でもその中には、表には出さないジェイドに対する責めの刺があって、その刺はジェイドの胸にチクチク刺さってその存在を彼に知らしめる。
そして暫らく、ジェイドは跋が悪そうに眉を潜めて黙り込むと、何か決意したように躊躇いがちに再び口を開く。