mirage of story
暗いでもない。
明るいでもない。
いつもと同じ....でも何処か感情を押し殺したような声で続ける淡々としたジェイドの言葉が、セシルを含めたこの空間を振動させる。
そしてその言葉は抑揚なく、周りを埋め尽くす無数の本へと吸い込まれ、やがて消えた。
「それからは酷いもんだったな。
俺はアイツの仲間として、部隊の奴等と一緒にあらゆる人間を殺した。
女も子供も、あらゆる理由をつけて。時には何の理由もなく、人間達を襲い惨殺した。
本当の理由はただ一つ。
それはただ、相手が人間だから。それだけさ。
復讐。それが俺達を駆り立てて、俺はライルと同じ志の元にずっと共に戦った」
魔族が人間を殺す。
人間が魔族を殺す。
そんな不条理が条理になりつつあるこの世界では、ジェイド達が行った人間に対する殺戮の数々は彼等の中で当然のように正当化された。
ジェイドも例外ではなく、人間を殺すという行為に罪悪感を感じることはなかった。
ただ使命感に似た、人間に対する復讐の念。
それが本来あるべきである罪悪感を掻き消してしまっていたのかもしれない。
「別に人間を殺すことに罪悪感はなかった。
ルシアス姫さんを殺したんだ。人間なんて当然死ぬべきもんだと、俺も思ってた。
......だがな、俺達を前にして泣き叫ぶ人間達を見て、ふと思ったんだ。
こんなことを続けることが、ルシアス姫さんのためになるのかってな」