mirage of story
「ふぅ......」
そして二人から零れたのは、満足そうな溜め息。
お腹も気分も満足になったのか、質素な椅子の上でグッと身体を伸ばした。
「本当、美味かったな。シエラ」
「うん。
こんな美味しいもの食べたの、久し振りかもしれない」
ほのぼのとした空気が流れる。
何だかこんな空気の中に居る自分が物凄く遠い昔に感じて、込み上げる穏やかな気持ちをシエラは噛み締めた。
「......ここの所ずっと気が休まる暇なんて無かったし、食べる物だってロクな物食べてなかったからな。
ふぅ。
何か今、凄く幸せだ」
こんなことにこれだけ幸せを感じられるのは、今まで彼等に起こった過酷な出来事があるからだろう。
大切なものを失った。
大切な人を失った。
憎しみの色が増し、この世界の中での己の無力さを思い知った。
辛かった。
本当に、辛い。
出来ることなら逃げ出したかった。投げ出してしまいたかった。
でも、目的を果たす。
ただそれだけのために、堪えてきたのだ。
そんな彼等には、ただこんな些細なほんの一時の幸せが本当に大きく感じられる訳で。
そんな一時の幸せを、出来る限り身体一杯で噛み締めていた。