mirage of story
そんなカイムにシエラはフフッと笑いを溢した。
そんなシエラにカイムも笑った。
「そういえばさ、カイムの方はどうなの?
あの.....捜してるお父さんのこと、何か分かった?」
もう一度向き合い座る二人。
暫らく二人は笑い合い、少し落ち着いたところでシエラはそう口を開いた。
「っ!あ....あぁ、父さんのことか。
いいや、残念ながらまだ何も。
魔族のことを聞いて回ったり調べたりするついでに、色々と調べてみてはいるんだけど.....今のところは全然駄目。手掛かり一つ見付かってないんだ」
カイムの父。
そうそれは、カイムがまだ幼い頃に自分と母を捨て姿を眩ました父のこと。
カイムには父との記憶が、ほんの薄らとしたものしかない。
顔すら曖昧で、はっきりとした父の像が彼の中にはなかった。
だがそのほんの薄らとしたカイムの記憶の中での父の姿は、とても凛々しく気高く.....そして優しいものだった。
そんな父が、どうして自分達を捨てたのか。
その理由がどうしても分からなくて、カイムはその理由を――――父のことを追い求めていた。
今こうしてシエラ達と共に異郷の地を旅しているのも、自分たち人間の敵である魔族を打ち倒すという目的の他に、彼の中には父を捜すという目的もある。
だから行く先々でカイムは父のことについての情報を集めようと、地道に聞き込みなどをしていた。
シエラ達に迷惑を掛けてはいけないと、そのことをカイムは面に出してはいなかったが、シエラはその姿を陰から見て知っていた。