mirage of story
「........そう」
父のことをいきなり聞かれ想定外だったのか少し驚いた様子のカイムの言葉に、シエラは残念そうに言い目を伏せた。
「気にしててくれたのか.....ありがとう、シエラ。
今はロアル達のこととか、これから先どうするかってこととかを最優先に考えなきゃいけないっていうのは分かってる。
だけどやっぱり、どうしても父さんを見付けたくて......ごめん。迷惑はかけないようにする」
自分のために残念そうに瞳を伏せてくれるシエラ。
そんな彼女を前に、何か唐突に自分に腑甲斐なさを感じてカイムの口からポロリと謝りの言葉が漏れた。
「っ!迷惑だなんてっ!
全然迷惑なんかじゃないよ。大切なことじゃない。
家族なんだもん。絶対に見付けなきゃ駄目よ。
私も....私も協力する!」
謝るカイムのその声に伏せた瞳をパッと驚いたように見開き、少し声を張る。
だが周りに他の人が居るということもあり、声はカイムに聞こえるくらいのトーンを保ったままだった。
そのおかげか周りの他の客達がシエラの声に振り向くこともなく、それぞれそのまま食事をしたり各々の話に花を咲かせていた。
ただ店の人だけが、ほんの少しシエラを顧みてそれから何事もなかったように仕事へと戻っていった。