mirage of story
「.......ありがとう」
シエラの真剣な眼差しと言葉に、カイムは素直にそう答えた。
自分のことで、彼女に迷惑は掛けたくない。
その気持ちは変わらなかったが、それでも自分を気に掛けてくれるシエラの存在は素直に嬉しいものだ。
自然と心がホッと温かくなり、落ち着くのが分かった。
温かさの残る胸の余韻に少しの間、カイムは浸る。
そしてそれから落ち着いたように、再び口を開いた。
「シエラ.....一つ聞いてほしいことがあるんだ」
「ん、何?」
その声にシエラは答える。
「.........俺の父さんは魔族だった。父さんは魔族の城に仕える臣下だったらしい。
だからこれからロアルやライル達と対峙していく中で、今よりもずっと父さんに近付けるかもしれない。もしかしたら、会うことだって出来るかもしれない」
「―――うん、きっと見付かる。きっと会えるよ」
微笑みながら、頷きながらシエラはカイムの言葉を聞く。
彼女はきっと誰よりも、カイムの願いが....つまりカイムが父親と再会出来ることを願っているはずだ。
それはもちろんカイム自身望むことだし、シエラがそう願ってくれることだって実にありがたいこと。
でもそんな彼女に、そう願ってくれるシエラにカイムはどうしても言っておかなければならないことがあった。
それはこれから先、十分起こり得る可能性。
カイムが望み、シエラが願うものへの残酷な代償の可能性。