mirage of story
「だけど......」
そしてその衝撃に耐えられなくなって、シエラはカイムに何か言おうと口を開く。
黙って聞いて居られなかった。
カイムがそんな哀しいことを口にする姿を、黙ってこのまま見ていることに耐えられなかった。
「まぁ、俺が言っておきたいのはそれだけ。
......何か気分が暗くなっちゃったな。ごめん。
気分転換に、何か飲み物でも頼もうか」
なのにカイムは、シエラの言葉を無理矢理に押し留ませるように遮り、フッと気分を変えるように笑ってみせる。
そんなカイムにシエラは出かけた言葉が出てこなくなって、そのまま黙り込んでしまう。
ずるいとシエラは思った。
カイムの見せる哀しい笑顔。
そんな顔を見せられたら、何にも言えなくなってしまうではないか。
言いたいのに。
彼の言う哀しすぎる言葉に反論したいのに。
そんな笑いを見せられたら、言葉が出せなくなる。
ずるいではないか。
自分だけ言いたいことを言っておいて、その笑顔を見せて何も言わせないようにしてしまうなんて。
言葉を失ってそんなことをシエラが思っていると、そこに一つの影が自分達の方へと近づいて来た。
その気配を感じてその方を見て見ると、それはこの店の店の人で前に居るカイムがいつの間にか挙げていた手に気が付いてやってきたようだった。