mirage of story
気が付けば、いつの間にかシエラのカップも空になっていた。
口の中にはまだ甘い芳香が残り、身体中がホッとしたような気分。
シエラの気分もおかげで、すっかり落ち着いた。
「んー.....じゃあそろそろ行こうか。シエラ」
テーブルに空のカップが二つ。
暫らくお茶の余韻に浸るように時間が経って、カイムは息を一つ吐きそう言ってスッと椅子から立ち上がった。
そんなカイムにシエラは頷いて、立ち上がる。
「勘定をお願いします」
辺りを見回し店員を見つけると、そう言いヒラリと手を挙げる。
それに気が付いた店員が、急ぎ足でこちらにやってくる。
店員はテーブルの伝票を手に取り勘定を告げると、カイムはポケットの中を探ってそこから小さな布袋を取り出した。
カイムはその中から銅貨を三枚取り出すと、「これでお願いします」と店員に手渡す。
「じゃあ、行こうか」
代金を手渡し、再び布袋をポケットの中にしまうとカイムはシエラの方に視線を向けた。
そして身を翻して、店の外へと歩いていく。
「う....うん」
シエラはその背中を小走りで追い掛けて、カイムの隣に並んだ。
「シエラ、これからどうする?」
「....うん、どうしよう」