mirage of story






理由はいくつかある。


母さんが殺された時も夜だった。
村が燃えて消え行く時もまた夜だった。

そしてアトラスでの闇の中でのライルとの戦い。



嫌な思い出が、夜に集中していることにシエラは気が付く。









(でも.....それだけじゃない気がする)



でもシエラが夜に恐怖を覚える理由は、それだけではないような気がした。





隠された理由。
それははっきりとはしないが、ただ漠然とシエラを支配する。

走っても走っても終わりのない。光が見えない常闇。
迫り来る足音に奔る悪寒と死への恐怖。



何だ....何なんだ。
記憶にないはずのそんな光景が頭の中に流れ込んでくる。

感じるのは恐怖。
それ以外、何もない世界。






(............これは、あの夢の中の)



頭の中に流れる光景を、ハッとシエラは記憶の中に見付ける。



記憶。とはいっても夢の話。

最近はあまり見ていなかったが、以前はよく見ていたあの夢。
起きると涙が止まらなかった、あの不思議な夢の光景であることに気が付いた。




闇。
闇、闇....そして一筋の青。

思い出し蘇る夢の記憶の中に、恐怖と重なる闇色以外の色があった。



それは、青。
澄んだ綺麗な、でもとても哀しい青い瞳。

隣に居てくれた.....あの夢の中で自分に光を与えてくれた少年の瞳。






 
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