mirage of story
(どうして、どうしてあの青い瞳は.....あんなに哀しそうだったんだろう)
哀しいあの瞳が頭に浮かんで、離れない。
どうしてあの瞳はあんなに哀しげに自分を見るのか。
あれは....誰なのか。
忘れていた疑問が夢の記憶と共に蘇る。
(......駄目、分からない)
頭を捻った。
だがやはり、疑問は晴れない。
頭の中が、鎖が何かで締め付けられているように軋むばかり。
ギシギシと、頭が痛む。
(何だろう......私....)
身体が震えてきた。
目頭が、何だか熱くなってきた。
どうしたのだろう。
身体が、おかしい。
「シエラ」
唐突に聞こえてきたカイムの声に、ハッとシエラは現実に引き戻された。
そうだ。今はカイムとこの街を散策している途中だった。
そのことを思い出し、痛む頭の中の靄を無理矢理に振り払った。
「何?」
名前を呼ばれ問い返すシエラに、カイムは前を真っ直ぐ向いたまま答える。
その顔は、何故か真剣だ。
「いい?前を向いたまま振り向いたりせずに聞くんだ。
声を上げたり、変な行動はしちゃ駄目だ」
「え?う....うん」
現実に引き戻されたシエラは、隣を歩くカイムの様子が明らかに変わっていることに気が付く。
真剣で何処か警戒しているような声に、先程までの穏やかな面影はない。