mirage of story
変わり者。
それは、この文面からも分かる。
今のこの時代となってこそ正式な歴史書としての体裁が整っているが、当初は変わり者の王がまた変なことを始めたと家臣は皆呆れたものであった。
この時はもう既に"竜"というものは人々の、魔族からも人間からもその意識から遠ざかっていた。
二度目の世界の崩壊の危機から、幾千年。
時は人々から、また大切な何かを忘れさせてしまったのである。
そんな趨勢での、竜の存在を肯定するような考え。
しかも皆が世界を支配しているのは"人"であると心の中で思っている中での、"人"の愚かさを前に出したような言葉。
この新世界白書は単なる物語としては成り立っていたが、世界の流れに反したそれが歴史の書物として扱われることは到底無いように思われた。
"世界のことを何も知らない者が、これから先世界を壊していくことが許せなかったのであろう。
竜達が守ってきた世界で、まだ生まれたばかり同然の人間が世界の王の如く台頭していくことを、竜は許すことが出来なかったのだ。
だから竜は、この世界を壊してでもそうなる未来を拒んだ。
人に慈しむべき世界を壊され支配される世界で生きるよりも、その手で世界を壊すことを望んだ。
それが、あの世界の崩壊の危機を生んだのである"