mirage of story








古の時代のあの世界の崩壊の危機――――水竜と炎竜が苦渋の中で同胞を地の底へと封印して免れたあの危機。

あの危機のことでさえ、人の中ではもう"大災害"という記憶だけが残り、竜の怒りであったことは単なる伝説として伝わるのみ。





そして人の手によって引き起こされた二度目の危機も、今となっては事実かどうかを疑う者も少なくない。


指輪を手にし崩壊の道へと奔って行った人の生きざまは、もはやただの狂人の犯した過ちと化している。











"竜達がその身を以て崩壊の淵にまで陥った世界を救った。


竜達は過ちを犯した我々に挽回の機会と希望を与えた。

世界を守ってきた竜達の中の王たる三匹のうちの、一匹を犠牲として。



荒れ狂い世界を壊す道を選んだ三匹のうちの一匹......閻竜(えんりゅう)を地の底へと封じた。



そして同胞を封じ、残された二匹の竜。水竜と炎竜。

彼等は己等の身をも指輪に封じ、その指輪の中から世界を見守り人にその力を貸し、閻竜が封印を破り再び世界を崩壊に導かぬよう見張り、平和な世界を再び築こうとした"








長く続く冒頭。

それは本当に物語の始まりのよう。お伽話のよう。






だが、どうしてこのような話を思いつくだろう。

此処に書かれた全てが、王の妄想の産物というのか。
王の頭で作り上げられた虚偽の世界というのか。







 
< 749 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop