mirage of story
彼の死後。
指輪は誰かの手に渡り世界を危機に陥れることを防ぐため、彼の意志により彼の治める魔族の国の城の地下へと追いやられた。
その二代後、彼の孫によって見付けだされることは彼自身にも想像はついていなかったが。
でもその孫は彼が恐れたような道へは歩まず、それどころか彼と同じように水竜と契約を結んだ。
そして水竜と彼の意志を継ぎ、指輪の力が濫用されないよう水竜の指輪と行方知れずだったもう一つの炎竜の指輪を見付けだし、自身の治める国家で管理をすることを決めた。
また、祖父である彼の意志を後世へと伝えるために、父は馬鹿らしいと言って継がなかった新世界白書を自分の代からこの国の王が歴代語り継いでいくことを掟とした。
歴史が歴史を重ね、その上にまた新たな歴史が生まれる。
人の心から忘れ去られてしまったとしても、この書がその歴史を記憶し語ってくれる。
いつの日か世界に再び崩壊の危機が訪れたとしても、その世界に刻まれた記憶が世界を救う手立てを与えるだろう。
指輪は竜の意志と共に受け継がれ、平和の礎となるだろう。
そう彼もその孫も信じ、そして願っていた。