mirage of story
〜2〜








"今日というこの日は私にとって......そして世界にとって、歴史的な一日となった"






それから指輪を管理する平和を願ったかつてのあの彼等の血を引く王達が、時代と共に何代か過ぎていった。


過ぎ去る時の中、多少の飢饉や災害などには見舞われた。

とは言うものの、王と指輪に宿る二匹の竜が願った通り、平和な時が続いていた。




二つに分かれた、人。


魔族と人間、国や種族としての観念の上での隔たりはあったが、互いは尊重し合い友好は深かった。

二つの種族間での紛争も起こることなく、流れる時の中で"人"は生きていた。












"娘が生まれた。
愛すべき、私の娘が。

これほどまでに嬉しいことが、今まであっただろうか"





時は流れ、そしてとある王が魔族の国を統治していた時代。

歴代の王達が受け継ぎ綴り続けてきた古く分厚い一冊の本に、その王も新たな歴史を綴っていた。




古く黄ばんだページ。
時代を感じさせるような、古臭い書物の匂い。

そんな古くから伝わる新世界白書のあるページに奔るまだ真新しさを感じる黒い文字からは、抑え切れぬほどの喜びが溢れだしていた。










"娘の誕生を待ち切れず、妻の寝室の扉の前で右往左往していた私の耳に飛び込んできた産声。


我慢出来ずに部屋の中へと飛び込んだ私を迎えてくれたのは小さな小さな娘と、務めを全うした妻の姿。

今でも目蓋の裏に、鮮明に思い出される" 







 
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