mirage of story







何を考えているか分からない。

傍から見ればロキ自身も非常にそれに当てはまるが、ロキにとってはジェイドのあのヘラッとした軽い感じが腹が読めなくて実に苦手だった。





ロキの場合、故意に感情を隠したり己を偽っているのではなくロキ自身の自然体の結果。


だが、ジェイドは違う。

彼の場合は故意に、それも相当頑なに自分の本質を彼の中で作り上げられた偽物の自分で被い隠している。





自然体でそうなるより、故意にそうする方がよほど質の悪いことなわけで、内では何か企てているのではないかと思わず疑ってしまう。

ジェイドの顔に浮かぶ軽い笑みは相手の警戒心を薄れさせるが、同時に相手をそのような疑惑に誘い一定の距離を置かせそれ以上踏み込ませない。
彼は相手と馴れ合うようで、事実相手を拒絶しているのだ。












(.......あの男は厄介だ。

敵なのか、味方なのか。
それすら判断出来ない者と、彼等の連れとはいえ共に行動するのはリスクが高すぎる)





外とこの空間とを隔てる薄い布の一点を凝視し続ける。

ピクリと眉を潜めて、注意して見なければ気が付かないくらい微かに怪訝そうに顔を歪めると、またすぐにいつもの無表情に戻る。




そして一つ瞬き。

一度閉じ、再び開く紫色のロキの瞳に煌めく光は先程よりも心なしか鋭く見えた。






 
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