mirage of story
「大丈夫です、これくらい。
それよりも、ごめんなさい。私達に合わせてくれているせいで着くのが遅れてしまって」
「私の受けた命は貴方がたを無事に我が主人の元へとお連れすること。
無理を言っているのは、こちら。貴方がたの都合で構わない。
私はそれに合わせるまで」
「..........そうですか」
スッと一瞥してまた視線を何処かに向けたロキと、続かない会話の間に流れる沈黙。
どうしようもなく居心地の悪さを感じて、シエラはロキに向けていた一方通行の視線を逸らした。
流れる無言の時間に、何か向こうから話してくれないかと彼女はうっすら期待する。
だが数秒後。
その相手がロキであることを思い出して、その期待はぷっつりと消え失せた。
ザッ。
「おう。嬢ちゃん達よ、起きな?朝だぜ」
どうにも途切れない沈黙に、シエラが堪えきれなくなってきた丁度その時。
なんともタイミングよく、ジェイドが張ったテントの布を捲りひょこっと顔を出した。
捲られた布の隙間から漏れる外からの光がジェイドを背後から照らし、シエラには彼女の心情も合わせてその姿が神のようにすら見えた。
「.......って、まだ寝てんのはカイムだけか」