mirage of story
「竜達の住処......」
「あくまで言い伝えという域の話だが」
ロキの言葉に自然とシエラは言葉を漏らす。
その漏らした言葉に、ロキがすかさず付け加えるように答える。
「確かにこの雰囲気じゃ、竜なんかが棲んでたっていっても可笑しくねぇわなぁ」
「そうですね......」
ジェイドが笑いを含んだ声で言い、カイムも続く。
確かにこの神秘的な雰囲気は、何か人とは異なるものが潜んでいそうだというのは頷ける。
竜だと言われても見たことなどないのだから実感はないけれど、この森の雰囲気はそんなことを帳消しにしていた。
「我等の根拠地はこの森を抜けたその先に。
歩いていけば一日二日で抜けられる。
けれど急ぐ必要はない。
日も暮れてきたことで動きを取りづらくなる。今日はひとまずこの辺りで夜を越すのがいいかと」
三人が一様に感心し雰囲気に飲まれる中、一人だけ表情一つ変えずに冷静なロキは淡々と機械のような口調で言う。
業務的すぎていて、あまりに人間味のない。
そんなロキを見ると何だか感心仕切っている自分達の方が可笑しいかしいのではないかと錯覚して、三人共に顔を見合わせ苦笑する。
「じゃあ、そうしましょう」
シエラが言い、カイムとジェイドは苦笑を浮かべたまま頷いた。
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