mirage of story









「.........さてと。そうとなれば、日が落ちちまう前に野営の準備済ませねぇとな。

よっし、嬢ちゃん達やるか!あ、もちろんロキちゃんもな―――って」







ロキには悪いが、彼が話すと必ず微妙な空気になってしまう気がする。

まぁロキ自身は多分、そんなこと全く気にしていないとは思うが。
周りに居る者達には大いに気になってしまう。




現に今もまた何か微妙な空気になりかけているのは明らかで、その空気を戻そうとジェイドは声を少し弾ませて言う。

シエラを見る。カイムを見る。
そしてそれからロキを見て、どうしてか言いかけた言葉と視線を止めた。












「ど、どうしたんですか?ジェイドさん」




止まる言葉に、カイムとシエラは互いに首を傾げて見合わせ、ジェイドの視線が止まったその先を目をやる。



その方向にはロキが居るはず。

ッ。
きっとまたいつも変わらないあの何の感情を読めない顔をして、そこに立っているだろうことを予測して二人が振り向くと、そこには予測した通り....ではないロキが居た。














「っ!」




ロキは、てきぱきともうすでに此処での野営のための準備に動いていた。

なんて仕事の早いこと。
此処での野営が決まり、今までほんの僅かなのに。







無表情、無感情。
それでいて無駄に手際良く、テントを張れるように邪魔な小枝を伐りスペースを空け黙々と作業する。
その動きはまるで人間ではなく、機械のようだ。

その姿は奇妙に見えて、振り向き見た瞬間に二人はギョッと軽く飛び跳ねた。








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